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台湾その日暮らしが終わり、2018年3月に帰国しました。


by ken1horie
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ポルシェ・エクスペリエンスセンター東京に行ってきました。

 先日ポルシェ・エクスペリエンスセンター東京へ行ってきました。切ない話ですが、自分の現状ではポルシェを購入するだけの財力はないですし、一生無縁の車だと思っていました。しかし自動車の電動化が更に加速している昨今、ガソリンエンジンのポルシェに一度乗っておくべきだろう、と感じたと同時に、あの時乗っておけば良かった……、と後悔したくありませんでした。加えて現在の世界情勢や自分の周りの影響がある事も否めません。自分がしたいと思った事を出来る機会(opportunityでありchanceではありません)があるのであれば、それはすべきだと思うのです。繰り返しになりますが、人生においての後悔は出来るだけしたくないのです。

 そんな理由から今回予約したドライビングプログラムは911 GT3にしました。この車を選んだ理由はエンジン。それだけです。それ以外の理由はありません。510馬力を発生する水平対向6気筒エンジン、しかも自然吸気エンジンで、レブリミットの9000rpmまできっちり回るそうです。それだけのパワーを使い切るシチュエーションなんて、まず日本の公道上ではないでしょう。考えてみてください、これから先の時代にこの大排気量の自然吸気エンジンが堪能出来る機会なんてもうないでしょう。しかもドライビングプログラムの時間は90分間。こんなエンジンが乗っかっている車を90分間も各種のドライビングプログラムを体験出来る機会も、そうある事じゃありません。ドライビングプログラムの価格に関しては人それぞれ感じ方が違うでしょう。しかし、自分が今回このドライビングプログラムを受けた後の感想は、率直に言ってその内容からすると非常にリーズナブルな価格であると感じました。ガソリンエンジンのポルシェがなくなる前に、興味のある方は是非体験しておいた方が良い、と私自身は強く思いました。

 ドライビングプログラムで運転できる車種や、コースに関しての詳細は直接ウエブサイトの内容を参照にしてください。ウエブサイトを眺めていると、本当にどの車にしようか、と迷ってしまうと思います。

 今回自分が選択したのは、911 GT3のドライビングプログラムなので、ハンドリングトラック、ダイナミックエリア、ドリフトエリア、そしてローフリクションハンドリングトラックを体験してきました。

 どのプログラムも、最初にインストラクターさんが説明をしながらドライビングのデモンストレーションを行い、その後に自分自身がドライビングを行うスタイルでした。また、ドライビング中にも、インストラクターさんが適切にアドバイスをしてくれます。ですから、普段車を運転されている方でしたら、このドライビングプログラムを受ける上で大きな不安はないと思います。

 まず最初にハンドリングトラック、この施設のメインコースを走ります。このコースはサーキットではありませんから、制限速度は100km/hでした。インストラクターさんがデモで示した通りのドライビングを行わないと、気持ちよく綺麗に駆け抜ける事が出来ない難易度があるコースでした。減速すべきところでは、しっかりとブレーキを踏んで減速を行い、ラインを正確に読んでハンドルを切りながら走り、アクセルを踏むところはきちんと踏み、それらが全てピタっとハマった時の爽快感と言ったら言葉に出来ないくらいでした。

 ハンドリングトラックには石畳の上を走る所もあるのですが、フロントに20インチで扁平率35、リアは21インチで扁平率30のタイヤを履いているにも関わらず、ここを通過する時には不快な突き上げ感が全くありませんでした。本当に良い足回りなのでしょう。ショックも1発で吸収して揺れを感じる事もありません。こんなにも高いボディ剛性を持った車は初めての経験で、ボディの軋みや歪みが存在しない様にすら思えました。そしてタイヤはどこまでも路面にへばり付く様に高いグリップ力を維持しながら走り続けていきます。

 同じコースをひたすら何周もして行く中で、運転中にはその存在を感じる事は全くないのですが、常時電子デバイスが運転に介入しているだろうと思われる状態でありながらも、車と対話をしながら運転をすれば、より一層車との一体感が高まり飽きる事がありませんでした。それは、この車を運転するにあたってアクセルの踏み幅や抜き幅、ハンドル操作、そしてブレーキングのタイミング、踏み代やリリースのタイミングを丁寧にコントロールする事によって、より一層自分が思い描く運転に近づいて行く事でもありました。そして、コースを何周かして運転が安定してきた頃合いを見計らって、インストラクターさんが次のダイナミックエリアへと案内してくれました。

 ダイナミックエリアでは、フルブレーキング、スラローム、そしてローンチコントロールの体験となります。長めの直線コースでアクセルを思い切り踏み込み加速してからのフルブレーキング。そして、スラロームではこの車の非常に高い走行安定性能を強く感じました。ローンチコントロールではレーシングカーの様なスタートダッシュを体験出来ます。自分ではどうもこれらが苦手で、思い切りよくスタートが出来なかったり、スラロームでもパイロンを引っ掛けてしまったりと、残念な部分がありましたが、言い換えればそれが今の自分のドライビングスキルのレベルなんだろうと思います。それでも、911 GT3自体の持っているエンジンパワーやブレーキの強力さ、そして高いレベルの走行安定性の一部を実感できた事は間違いありません。ダイナミックエリアの後は、ドリフトサークルへと進みます。

 ドリフトサークルはスプリンクラーで路面を濡らしている低摩擦の円周コースでした。自分自身普段は、と言うより今まで車をドリフトさせたり滑り始めた車にカウンターを当てるような事は一度もした事がないのです。そんな中で、ドリフトの初体験が911 GT3と言うのは、それだけで緊張しっぱなしでした。ここでは、2段階設定が可能なスタビリティコントロールをOFFにして走行する事も可能でした。実際にスタビリティコントロールを全てOFFにしてしまうと、車はあっという間にスピンをしてしまいました。スタビリティコントロールが効いている状態でも、アクセルの踏み方が雑であったり急であったりすると、直ぐにオーバーステアが顔を出します。そんな中で綺麗にドリフトをさせてカウンターを当てる事は出来ませんでしたが、それでも心ゆくまで車をスピンさせたり、スタビリティコントロールの偉大さを知る事が出来たのは、非常に大きな収穫だったと思います。それだけ現在の最新テクノロジーを集めて設計された車の安全性が非常に高いことも判りました。なるほど、電子部品不足で車の生産が止まってしまうわけです。

 そして、ドリフトサークルの後は、ローフリクションハンドリングトラックです。所謂低ミュー路コースです。タイヤがグリップしにくい低摩擦路で安定したドライビングを行うプログラムでした。ほんのちょっとのラフなアクセルワークや一瞬の雑なブレーキングで車の姿勢が大きく変わるこのコース。ペースを上げなければ、それなりに周回する事も可能ですが、雑なアクセルワークをすると直ぐに車の挙動が乱れます。それだけ、アクセルワークの丁寧さを求められ、普段の自分の運転を省みる事も出来るコースでした。

 90分のドライビングプログラムが終わりに近づいた頃、残り時間でもう一度体験したいコースを選ぶ事が出来ました。自分はハンドリングトラックで走るのが、個人的には一番楽しく感じたので、最後にこのコースを2周して今回のドライボングプログラムは終了となりました。最後に今回運転した911 GT3の写真をスマホで撮り、また運転席に収まった状態での写真もインストラクターさんに自分のスマホを渡して撮ってもらいました。こうして濃密な90分間は終わりを迎えました。

 今回運転した911 GT3ですが、本当に精度の高い部品とそれらを組み立てる精度もまた非常に高い事が、ハンドルを握って走り出した瞬間に判る車でした。アクセルやブレーキは踏んだ量でリニアに反応するタイプで、しかもずっしりとした重さがありました。ブレーキに関しては、踏んだ時にはペダルからドリルドディスクの感触が明らかに伝わってきます。ハンドルも低速では重く、スピードが上がるに連れてその重さは減っていきますが、それでも軽さを感じる事は一切ありませんでした。そしてその重さが、タイヤの強烈なグリップ力から発生している事も判ります。エンジンはひたすら挑発的で、ついついアクセルを多めに踏み込んでしまいがちなサウンドを常に奏でていました、もっとアクセルを踏んでくれと。それに加えて、ストレスなく回転数が上がっていくのですから、このエンジンの魅力に抗うのは本当に難しいのではないでしょうか。このドライビングプログラムでもそう思えるのですから、公道を走る場合は、更にフラストレーションが溜まってしまいそうです。他にもボンネットは贅沢にカーボンを使って作られており、信じられない軽さでした。インストラクターさんの説明では「殆どレーシングカーと同じですよね」との事。確かに、この車は公道を走る事が出来るレーシングカーと言えるのかも知れません。そう言う車ですから、当然運転するには体力も必要ですし、またドライビングには丁寧でデリケートな操作も必要でした。それらが本当に確実に出来ていたのかは自分では判断出来ませんが、これほどアクセルワークをシビアにコントロールしながら、またブレーキの踏み代やリリースのタイミングを考えながら車を運転した事は、今までなかったと思います。ですから、90分間のドライビングプログラムが終了した時には、かなりの疲れも感じました。そして今回の機会にこのドライビングプログラムを体験する事を決めて良かったとも思いました。このドライビングプログラム、歳をとってからではその内容を充分に堪能する事は難しいのではないか、と感じたからです。身体が十分に動き加えて体力もないと、この90分間の終わりの方にはバテてしまいまともな運転も出来なくなるのでは、と思ったのです。

 ドライビングプログラムが終わり自分の車で帰路につきましたが、911 GT3を乗った後に運転した自分のABARTH 595は本当にサイズもコンパクトで軽く、それはそれで自分にとっては良い車であり、丁度いい車でもある事を再認識しました。911 GT3も素晴らしい車だと感じています。しかし、その感じる良さは比較が出来ない違う価値観だとも思いました。当然、ポルシェを実際に購入して、維持されている方はもちろん選ばれた方々だと思います。それが現実でしょう。しかし、こうして実際にポルシェを運転する機会があり、その素晴らしさを体験出来た事は自分にとっては本当にかけがえのない貴重な経験でした。そして、また機会があれば、他のポルシェにも乗ってみたいな、とも思っています。例えばEVのTaycanには大きな興味があります。Caymanも運転したい車の一つです。そう言った楽しみが、このポルシェ・エクスペリエンスセンター東京にはあると感じました。自分が訪れたこの日は、車好きと思われるグループの方も楽しそうにドライビングプログラムを体験したり、展示してある実車を眺めていました。ポルシェと言うと、どうしても敷居が高く感じられますが、非常に間口の広く多くの人達に開かれている施設であるとの印象を受けました。車好きな方であれば、また自分にはポルシェなんて敷居が高すぎる、と思っている方でも是非一度訪れてみてはいかがでしょうか。日帰りでドライビングプログラムを体験するもよし。千葉の温泉を一緒に楽しんだり、房総半島のドライブの途中に行くもよし。関東近県から行くのであれば、色々な楽しみ方と組み合わせてポルシェ・エクスペリエンスセンター東京に訪れる事が可能です。

 たまにの休日に、とても貴重な体験が出来ました。そして、また機会があればここを訪れてポルシェを運転出来れば、とも思います。インストラクターさんが笑顔で言った最後の一言が印象的でした。

 「また遊びに来てくださいね。」

 また遊びに行こうと思います。


by ken1horie | 2022-04-21 21:23 | | Comments(0)