台湾その日暮らし


by ken1horie
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映画「湾生回家」

 戦前日本が台湾を植民統治していた時代、台湾で生まれ育った日本人は「湾生(わんせい)」と呼ばれおり、この呼称については差別的意味合いも含まれていました。今、台湾で公開されているドキュメンタリー映画「湾生回家」は、この湾生と呼ばれる日本人にスポットを当てた内容の映画で、台湾でもちょっとした話題になっています。

 このドキュメンタリー映画に出演している方々は、子供時代を台湾で過ごした方達で、太平洋戦争の敗北により、成人前に台湾を離れた方々でもありました。映画全体の雰囲気としては、出演者にとって台湾は生まれ育った故郷であり、また楽しい思い出が多かった場所であることが伝わってくる内容となっており、また戦後は見知らぬ国日本と言えばいいのでしょうか、その日本へ戻って苦労されたような感じも、何となく伝わってくる内容となっています。

 映画の基本的な構成としていは、その「湾生」の方々が台湾を訪れ、其々の思い出の場所を訪れる内容となっています。また、出演者の殆どが、台湾東部花蓮を中心とした地域に移民された方となっています。その為に基本的には、花蓮を中心として映画は展開されて行きます。当然、日本統治時代の台湾には、花蓮以外にも、台北をはじめとして、その他地域にも、日本人は住んでいました。「湾生」と一口にいっても、色々な社会階層の出身者がおり、また一人一人の状況も当然違うでしょう。ですから今回映画の構成上、花蓮の「湾生」が中心となっているのは、何らかの理由があるのかも知れません。
 また、出演者に関しても、その年齢からして台湾で成人後も生活されていた方の出演は、難しかったのではないのか?と感じる部分があります。せめて、あと10年、或いは20年早く映画が製作されていたら、この映画の様に、台湾に住んでいた時は楽しかった、というトーン一色で映画が成り立っただろうか?という疑問も浮かんできます。そういう意味では、この映画の出演者は、ある意味台湾での生活が一番楽しく感じられる年齢だったのだろう、と想像できる方々で、その様な出演者だけで映画を構築されている、とも言えなくはないでしょう。

 そして、この映画はドキュメンタリー作品とは言え、あくまでも映画であり、エンターテイメント要素も含まれている訳で、また編集段階でカットされた部分もあるでしょう。映画には、日本敗戦後に台湾に残った日本人女性も登場します。その方は、台湾人男性と結婚して、台湾に残られた方ですが、その方のシーンは、非常に短くあっさりしておりました。戦後の台湾をずっと見つめられたその女性に関しては、もしかしたらもっと多くのドラマもあるかも知れません。しかし、その一瞬しか登場しなかった事に、違和感を感じずにはいられませんでした。
 また、台湾人夫婦の養女となった、日本人女性も登場します。映画の内容からは、母親から棄てられた、とずっと思っていたらしいその女性も、母親に関する情報が色々と見つかり、結果的にはハッピーエンド的な結末を迎える訳ですが、戸籍謄本が映画中に登場し、戸籍の見方を知っている人にとっては、色々と考えさせられる部分もあります。その様なプライバシー面の配慮に、もっと神経を使うべきではなかったのか?或いは、もっと適切なアニメーションでの表現や映画の構成手法はなかったのか?と疑問を感じずにはいられません。

 この映画が、戦後台湾から戻った人たちにスポットを当てている点に関しては、評価のポイントだと思います。しかし、映画の内容がどうしても、楽しかった台湾の一点に集中されている部分に関して、個人的に疑問が残ってしまうのです。私は映画の中で見える事以外にも、考えてしまう部分がどうしてもあるのです。そして、その考えてしまう部分が、どうしても映画全体の構成に対して、今一つスッキリしない部分を感じさせるのです。

 あくまでも、映画として楽しめればいいのかもしれません。しかし、その映画の内容からして、素直にエンターテイメントとして楽しめるものでもないでしょう。映画としての構成や、全体的なトーンが、単純であればあるほど、製作者側に理由や意図があるのではないのか?と勘繰りたくなってしまうのかも知れません。それだけ、考える部分が多い映画の題材であるだけに、非常に惜しい映画であるとも、言えるのではないでしょうか。
 
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Commented at 2015-11-23 12:49
ブログの持ち主だけに見える非公開コメントです。
Commented by ken1horie at 2015-12-09 22:38
鍵コメさん、返事が遅れて申し訳ありません。
ご感想、有難う御座います。
私自身は大学で台湾史の研究に片足を突っ込んでいたのもあり、どうしてもこのような映画に対しては、評価が辛くなってしまう部分があります。ただ、人それぞれの歴史があるので、何とも言えないのですが、やはり映画は映画だな、と改めて感じました。

現在台湾で働いています。色々と日本との違いはありますが、まぁ何とかやっています。続けられるかどうか、は判りませんが、出来るだけの事はしようと思っています。
更新は、あまりありませんが、それでも時々遊びに来ていただけると嬉しいです。

それでは、また。
by ken1horie | 2015-11-08 18:05 | 台湾生活 | Comments(2)